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手探り、震災後の文学

という記事が日経新聞に出ていた。作家を職業とする人は感受性が強い。強すぎることもままある。こころが耐えられず、壊れるぎりぎりのところで立ち往生する。大災害の後、書けなくなる作家が多いと、記事にあった。出版済みの本も書き直さずにはいられない。変わってしまった現実と書いてしまった表現のミスマッチが耐えられない。気持ちは、いっぱい、わかる。僕の2作目「燻り亦蔵」はニューヨークを舞台にしていたが、書いている途中に同時多発テロが起きてツインタワーがなくなり、世界が変わった。大統領はクリントンからブッシュへ替わり、アフガン戦争からイラク戦争へアメリカは突き進んだ。亦蔵とメグルを取り巻く世界も、登場するニューヨーカー達の意識も変わった。テロ前に出版していたら、物語の浅はかさひきずり、後悔は深かったと思う。書き直せてよかった。登場人物多胎のセリフに、変化の後のこころを込めることができたからだ。僕は、書けなくなることはない。なぜって、新しい世界には新しい出会いがある。新たなドラマがいっぱいはじまるから。悲しみの数より、生きていてよかった、と思うことのほうがずっと多いし、時間が止まることはないから思い出はこれからも積み上がっていく。美しい瞬間をみつけながら、これからも筆をとる。