2011年2月18日金曜日

芝浜とこいわらい

1998年頃のことだ。
ニューヨークで俳優を目指していた友人のマサが、「芝浜」を英語劇にしていた。
公立中学校でのボランティア上演。
彼は上演後、生徒達の前で座談会をして、芝居を締めくくる。

「芝浜」はこんな話だ。

あらすじ
裏長屋に住む職人の勝五郎は、腕はいいが酒好きで怠け者。
その勝五郎が芝浜の魚河岸で財布を拾う。
一目散に長屋に帰り、中身を数えると42両入っている。
勝五郎は大喜びで酒を飲み寝てしまう。
翌朝、女房に起こされ仕事に行くように言われる。
「金持ちになったんだから仕事をしなくてもいい」
「なに馬鹿なことを、夢を見たんだろう」
財布を拾ったのが夢で、家は貧乏のままらしい。
すっかり反省、改心し仕事に励む。
もともと腕はいいので、信用もつき、評判も上がり、
3年で表通りの店を構えるほどになった。

3年後の大晦日、女房が打ち明け、拾った財布を出してくる。
勝五郎は激怒するが、自分への愛とわかって得心する。
女房は勝五郎に
「お前さん、本当にがんばった。もういいよ。好きな酒をおやり」
永く断っていた酒をすすめる。勝五郎、杯を口に運ぶがやめる。
「よそう、また夢になっちゃいけねえ」



「これは、アルコール中毒患者が更正した話だ。君たちの親がもしアル中やドラッグ中毒だったら、君はどうやって立ち向かうんだ?」
当時、公立中学はひどい地区にあるのも多く、家庭的に問題を抱える生徒の比率も高い。
問いかけられた生徒が手を上げる。
「親が売人だ。俺は見張りを頼まれる。どうしたらいいんだよ」
生徒達は実際、そんな家庭環境で育っている。
いつも、切実な議論になるという。

「私たちは直接君たちを助けてやれないが、ドラマを届けることはできる。何かを感じて、前に進んで欲しい」



マサからこの話を聞いた頃、「こいわらい」はいったん完成していて、
知り合いの編集者とか、もちろんマサにも読んでもらっていた。
今思えば、話の骨格はできていたけど、自分勝手で浅い話だった。
人生の「景色」というものがない。

マサに教えられた。
こころに響く話を書きたい。
藤沢周平さんの小説を読みふけるようになったのはマサがきっかけ。



「こいわらい」はこころに響く話になった。
そして続編へ進み、ワールドトレードセンターの悲劇を超えて生きるニューヨーカーの話「燻り亦蔵」につながった。

グラウンドゼロに立つ。ソーホー・グランドホテルの窓を開ける。
かつて見えた、そこにあるはずのツインタワーがない。
みんな大丈夫か? 
元気でやってるか?

ぼくはそういった心情を意識し続ける人になった。
サラリーマンをやめ、アメリカにも渡り、挫折の連続、会社の倒産・・
でも何とかやっている。それは幸せなことだ。


それから12年。
「こいわらい」は書籍出版を経て、今、完成版がITunes Storeにライアンアップされている。


iPhoneで自分の作品を持ち歩ける、ってのは結構気分がいい。
それよりも、
12年の間に様々な経験をして、いい話にできたことが、
なんと言ってもうれしい。

芝浜がかかれば、また見に行きたい。

いっしょに行こう

2011年2月17日木曜日

映画「ソーシャル・ネットワーク」



観ました。
エンターテイメントメジャーの大作、というのとは味わいが違うけど
人間味もあるエンターテイメント作品。。
とはいえ、IT技術用語も盛りだくさんの長いセリフがいっぱい。
冒頭から主人公のマークが、プログラム言語であるApacheやPerlといった言葉を駆使して
早口でセリフをまくし立てるのでちょっと、みんなわかるのかなぁ、とも思った。
登場人物は全員トップクラスの頭脳を持つ人間ばかり。
アホはこの映画のキャラにひとりも設定されていない。

最後まで真剣に観ました。集中が途切れませんでしたね。
とっても面白かった。

術語はわからなくても楽しめる作品ということだが、
わかった方がもっと楽しい。
ウェブデザイナーがみたら、かなりわくわくするよね。
僕も多少IT業界にいたので、マークのドキドキ感が
キーボードでコードを打ち込む動作へつながる、こころの流れがよくわかった。



現代アメリカだなぁ、と思うのはやっぱり、
友人関係の諍いも、弁護士を交えた訴訟になるし
ハーバードでも、自分の道が見えたらさっさとやめちゃうし、
夢を追うのが第一、だめなら次を考える、という姿勢。
失敗しても、再挑戦すればいい。


ショーン役のジャスティン・ティンバーレイクのゆるくて鋭くてうさんくさい感じや
新人女性弁護士のセリフ
元財務長官でハーバード学長の雰囲気や言い回し、その秘書達、ベンチャーキャピタルの社員・・

僕も、もっともっといいセリフを書こう!




エンディング曲に使われてたビートルズの「Maybe I'm a rich man」の使用料、高いだろうなぁ。

2011年2月6日日曜日

謎の男達 Men in Grey

今年の文化庁メディア芸術祭で特に気に入った作品3つの作品のうちの一つ「Men in Grey」


Men in Blackならぬ灰色スーツの男が公共Wifiに入り込み、個人の通信をアタッシェケース型の機器で傍受する。悪用はしない。

「どこでにでも入っていける」と遊んでいるだけなんだが、ネット社会が来てしまった未来と、とんでもない恐怖を示している。

中国がGoogleを規制した理由が明らかになってきた。新華社が世界最大規模の検索エンジンを作ろうとしているというもの。世界一の契約者数を誇る携帯会社中国移動と組み、インフラにさりげなく情報統制の手段を埋め込む。


インターネットあるいはサイバー空間は設計次第で、人類が見たこともないほど規制しやすい場所になる。(ローレンス・レッシブ・ハーバード大学教授の警告 CODE Version2.0)


オープン・ネットワークはみんなのものだ。
仕組まれた情報操作は、結局みんなの手で抹殺される。

こわいのは、暴力が体制を握ったとき。
アルジェリアもエジプトもSNSが革命の必須ツールとなったが、
原理主義者が体制を握ったとき、情報操作に走る危険がある。

ひとりひとり、しっかり情報社会とつきあわないと。

2011年2月3日木曜日

世界で特異!な日本語版ウイキペディア

日本語版ウィキペディアは、世界から見るとかなりイレギュラーであるらしい。
「署名記事にして、なぜ論争しないのか?」
ということだ。

日本のウィキペディアンは、公開された既存の記事を思い切って変更する代わりに、ほかの場所やノート・ページで別のバージョンを練ることが多いという。

人との摩擦を避ける文化・・各国版ウイキペディアンの激しい論争、編集合戦、共同体意識から見て、日本は特異に写っているという。

2ちゃんねる、ひろゆき氏のウィキペディアについてのインタビュー
「ユーザーにユーザーIDが振り分けられてると討論は批判のしあいになりますが、匿名システムでは、意見や情報を批判されたとしても誰に怒ればいいのかわかりません。また、ユーザーIDがあると、サイトの常連が権力を持つようになり、ユーザーは反論しにくくなります。完全な匿名システムでは、つまらなけらば「つまらない」と言える。情報はすべて平等に扱われる。正しい主張だけが通る」

活発な論争はないといえど、日本語の記事数は世界5位だ。(2009年 8月時点)
1英語 2976299
2ドイツ語 9360909
3フランス語 833624
4ポーランド語 623777
5日本語 605534
6イタリア 593080
7オランダ語 550286
8スペイン語 498600
9ポルトガル語 496766
10ロシア語 418570
11スウェーデン語 323319
12中国語 263173
『ウィキペディアレボリューション(アンドリュー・リー)より』

良いことも悪いことも話し合う。
これがオープンコミュニティの基本。
Wikipediaもほとんどが記名。名乗りあってののしり合うことも文化の一部。

日本でインターネットを使っているユーザーの75%はブログを読む。ただし関わっていく比率は低い。
アメリカでブログを読むユーザーは20%程度だが、その20%の35%程度(=全体の7.5%程度)
は深く関わるユーザーだという。関わるとしゃべり続け、止めることがむずかしくなる。
面倒くさいこともあると思うが、当の本人達は、面倒などと思っていない。(面倒くさいって英語あったかな?)

大成功したネット靴屋「ザッポス」が社是とする「顧客の声を聞けシステム」にしても、
よく喋るアメリカの顧客あってのこと。

日本はどうだろう。75%もブログを読むというのは知的好奇心が平均的レベルで強いのだろうが、読むだけで声を出さない。「声」をマーケティングするにはむずかしい文化なのだ。アンケートだってなかなか答えてくれない。記名となるとほぼ無視。だから監視カメラの映像を分析したり、、探偵みたいな担当を張り付かせ、調査会社が「声」についての報告書を出したりする。

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マイクロソフト社は、今や4500人にもおよび社員ブロガーがいる。
「ウインドウズはベストなOSじゃない」と書いても、検閲無しでアップされる。
社内の会議もインターネットで公開されるものがある。
社の財産である企業情報を無防備に晒すことはリスクだと思われてきた。当然の倫理観だ。でもやってしまった。それで何が変わったか?
自由な文化にに惹かれてアップルやリナックス陣営へ移りつつあったプログラマー達が、ふたたびマイクロソフトに戻り、会社は前よりも儲かるようになったのだ。

IBMも今や1,000人程度がオープンソースの作成に関わり、アメリカンオンラインはケータイ向けAndroidのプログラムを懸賞付きでコミュニティに投げた。
(上記内容は「ロングテール:アップデート版 クリスアンダーソン著」を参考にしました)

質問を公開し、答を市場に求めるには勇気が必要だが、思い切ってやったところは成果を出している。99%はゴミでも1%の声に真実が含まれることを知り、声を大切に扱うことで顧客やコミュニティから支持されることを知ったのだ。

アメリカのIT企業がどろどろの論争の上に、通過儀礼を終えた。
ネット小売りは当然のように「声」を聞き、リアル小売りに波が押し寄せ、苦労の末、成功事例も報告されている。
現段階では、企業が守る部分とオープンコミュニティにゆだねる部分を使い分けながら、何がいいのか模索している段階であるが、時代は猛烈なスピードで変わり始めている。

日本でもTwitterのユーザーが1,200万人に達し、mixiを抜いた。
みんなちょっとずつ、オープンコミュニティに慣れはじめている。

日本人として、自らの「おくゆかしい」メンタリティーはわかる。だが、そんなことは言っていられない。海外に出たらわかる。

次回は私のアメリカ企業社長体験記。@ニューヨーク
オー・マイ・ゴッド










刀剣女子へ

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