皆保険の幸せ、アメリカで救急車で運ばれた経験。オバマケアを想う。

 アメリカが皆保険制度でもめて公共機関が閉鎖する状況になっていますが、皆保険という制度、日本では水か空気みたいに標準化していますが、世界ではぜんぜんそんなことはないのです。私達、本当に幸せなんですよ。
 ふと、僕がニューヨークに住んでいたとき、救急車で運び込まれた病院を検索してみました。そしたら閉鎖していました。Portchester Hospital。ニューヨークの北部、ウエストチェスター郡にあります。お金がなくなって破綻したそうです。こぎたない病院だったけど、救急搬送された僕を受け入れてくれた懐かしい場所です。
 当時家族でHarrisonに住んでいました。職場はマンハッタン14丁目ユニオンスクエア。会社の社長を解任された(これはこれで大事件だった)。翌日、仲間と3人でソーホーあたりのレストランで夕食中、経験したことのない痛みが襲ったのです。家にいるヨメに電話をして「今から帰るから病院を探してくれ」と言って、グランドセントラル駅から電車に乗りました。Harrisonまで40分。
尿道結石でした。死に至る病ではなかったけれど、世界3大ペインと言われる痛さの極致。
 這うようにHarrison駅で降りました。近くに「Westchester Hospital(上等の総合病院)がある」とヨメは言いました。英語もしゃべれないけど調べたみたい。しかしふと「ちょっと待て。いったん家に帰れ」と言ったのです。痛さは絶叫もだったのですが、自分の医療保険でその病院の診察が受けられるか確かめないと・・と思い当たったわけです。
 これがポイントだった!家に帰りパソコンを開き、保険証のIDとパスワードでログイン。するとどうでしょう。その病院は対象外! 要は自費です。
 すでに夜の10時、痛みは局地を越え地獄に踏み入っている。死んでしまう!
 病院を検索する。Portchester Hospitalが次ぎに近い。電話をかける。南無三。
「開いてますか?」「うちは24時間営業だよ」
と黒人女性っぽい発音。ヨメの運転で(アメリカ免許取り立てだったが、こういう経験の積み重ねで運転技術は上達)病院に到着。
急患で2回担ぎ込まれたPort Chester Hospital。お世話になった思い出は深い。
でも財政難で閉鎖したそうだ。

 到着したとき腰は曲がり、息は絶え絶え。
 とはいえ急患でも最初に何をすると思います?
 まず事務室へ行って保険の種類を申告、支払い能力の確認をされるのです。
 もう死ぬ! もうだめ〜「でもそれが先」
 そして診察。結石とすぐにわかったのですが
「どのくらい痛い? 10段階で何点?」と聞く。
 もう頼むわ。見たらわかるやろ、10点や10点!
 しかし問診は続く。病状を確認するのに「あなたは何国人か?」とファイルを渡される。パラパラめくると何十カ国の言葉で、どこがどのくらい痛いか? とか説明してあって、しゃべれない人は指さすだけでも用が足せるようになっている。日本人なので日本語の質問紙を読みはじめたが、この日本語が無茶苦茶。文法の間違いというようなレベルではなく、文章が途中でブチッと終わっていたりする。日本語は末尾で肯定文か否定文の違いがあったりするでしょう。途中で切れたら意味不明。
 英語で聞いてくれ! 痛いの見たらわかるやろ!
 やっとベッドに乗せられたが、病室は満室。廊下の隅、トイレの横がわずかに開いていたのでそこで点滴の準備をはじめた。ところが吐き気が来てトイレに飛び込んで吐き、ベッドに戻って点滴。しかし痛み止め程度では全然だめ。また吐く。「深呼吸して」と医者。必死の深呼吸。
(これははじめて知った。深呼吸は究極の麻酔なんですね。心を落ち着けからだを落ち着ける)
 多少マシになったけど30分くらいで爆発するような痛みが復活。廊下で絶叫を続けました。(うるさかったと思うわ。廊下だから骨折の患者とかいろいろおったし)。
 仕方がないので医者が「じゃあこれは効くぞ」とモルヒネを注射してくれた。はじめてのシャブ経験。びっくりしました。撃った尻から痛みが消えていく。夢のように。
 深夜、痛みがおさまると「帰っていいよ」と言う。ヤクも切れかけて、痛みと吐き気が復活していたけど、
「検査は泌尿器科を予約して行ってくれ」と追い出される。
「廊下でもいいから泊めて」「ダメ」
 支払いをして玄関を出る。そこでまた吐いて、正面玄関をゲロで汚す。
 家に帰る。痛み止めで朝を迎えたが、朝にまた最強の痛み再発。
 ついに救急車を呼ぶ。そしたら同じ病院へ。オーマイガー。
 アメリカは総合病院でも緊急処置だけ。検査は街の泌尿器科を予約して行けと言う。

 で、2週間後、やっと予約が取れて診察。街の小さな医院でした。
 検査で「ゴルフボール大の石」が尿道に詰まっていると聞いてびっくり。看護婦のおばさんが「このくらい」って手のひらを丸めて笑った。
「手術は病院を予約してください」
 ええ〜! また別の病院? 
 ということで手術予約。10日間放置。やっと入院して手術。
 全身麻酔だったからさすがに帰れない。ひと晩泊めてくれた。
 しかし次の日「じゃ帰っていいよ」と帰る。日本だったら完治まで入院。アメリカはなかなか病院に置いてもらえない。


 ひと月後にチンチンからヒモを抜いて(ばっと抜かれて絶叫)、処置終わりました。
全部で200ドル程度だったかな。安いでしょ。
 ポイントはカバー内の病院へ行ったこと。調べないで保険外の病院へ行っていたら3万ドルでした。(3.5百万円:当時)
 救急車も保険なら35ドル。もちろん無料ではないですが、保険外だと875ドルです。診察も手術も数十ドルでした。
アメリカの救急車。保険で35ドル(契約による)。自費で875ドル。

 どこの病院でもカバーしている保険もあるけれど、そういうのは掛け金が高い。入れるのは金持ちか大きな会社の社員。
 僕が社長をしていた会社も最初は「いい保険に入ろう」と健康保険もデンタル保険(アメリカでは歯医者は別保険必要)も社員ために入ったのですが、経営悪化で、安いプランに変更したんですよ。
 その直後、最初の患者が僕だったわけです。
 僕はそんなこんなでなんとか乗り切ったけど、同僚のひとりはカバーしていない病院にかかり250万円も払う事態が発生。日本なら当然保険内の症例だったのに。
 生き抜くには知識が必須です。 
 どこの病院へも行ける日本は天国です。
 でも医療財政は悪化の一途。むずかしい問題ですね。

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