小説「燻り亦蔵」

この物語の第一稿ができたとき、アメリカの大統領はクリントンで、ニューヨークにはワールドトレードセンターがありました。小説の刊行は第一稿から4年経ったのですが、その間にアメリカの大統領はブッシュに代わり、同時多発テロでツインタワーが崩壊、アフガニスタン侵攻、そしてイラク戦争へと突入していきました。9月11日の現場では、僕の友達のひとりも正義感に燃え、消防隊と一緒にまる一日ビルの中へ入っていたそうです。何をしていたのやら、訓練を受けた消防隊員でもないので皆心配し、出てきたときはほめられるどころか、まわりからはかなり怒られたようでした。そういった身近な人間が関わったような実感もあり、また物語に出てくるソーホーグランドホテルの窓から、実際ツインタワーを眺めた記憶もあり、存在が消えて空だけが残った、という気分が無情をかき立てたことは事実です。
そこから、この物語は様相を変えていきました。社会とは、戦争とは、人間とは、という疑問をタバコ問題を借りて書くことになったのですね。
グリムショーはこのあと大統領になったのでしょうか?
現実には初の黒人大統領であるオバマですが、さてこのシリーズでは誰に?
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